Statement-文化を伝える
弊社では、2006年より福岡県糸島市に所在する、明治34年(1901)に建築された旧西原邸を動態保存し、次世代へ繋げることを目的に、建築及び歴史・文化についての企画・発信を行っています。 2005年、解体に関する仕事柄、古民家の解体現場から再生可能な梁や柱などを引き取り、二次利用する「古材の森」という部門を設けて古材の販売をしていました。同年、糸島市にある古民家の所有者から「家を処分したいので、建物を見てほしい」と解体を依頼されましたが、中に入ったとたん「この建物は残さなければ」という思いでいっぱいになりました。その建物は、「綿屋」という屋号を残す大規模な町家で、江戸時代から唐津街道の宿場町である前原宿を支えてきた旧家・西原家によって、明治34(1901)年に建てられた建物です。 歴史的な価値が高く、糸島市中心地区の景観を残す上で非常に重要な建物であると判断し、建物を壊さずに活かす方策を考え、会社独自で修復・保存を行いました。
近年、弊社の主業である建築・解体の分野においても、環境への取り組みが重視されていますが、資源が乏しく、リサイクルが主であった時代の建造物を保存することで、建設・解体業への未来への資料として重要であると考えています。 油機エンジニアリング株式会社では、この貴重な建物を後世に残すとともに、建物の特徴を生かした独自の文化発信を行い、ご来館いただいた方々が日本の文化を感じていただけることを願っております。
Historical Architecture-建物の歴史
江戸時代中期より、糸島地方で屈指の商家として栄えた西原家は、屋号を「綿屋」といい、天明の年間(1781~1788)に唐津街道の宿場町であった前原宿に出て商売を始めたと伝えられています。 最初は、小さな店だったようですが、菜種等の取り扱いを始め、醸造業、質業、櫨実の集荷などに着手し、その後、貸付、酢・醤油製造、呉服と商品流通の波を巧にとらえ事業を拡大しました。 福岡藩への財政支援にも積極的に応じ、凶作時の貧民救済をはじめ、早魃時の救援など「西に前原綿屋あり」と称されるような豪商にまでに成長しました。
明治時代になると、呉服商を継続しながら、煙草販売、度量衡器販売、代弁業、郵便業務など商業活動の幅を広げ、同時に前原商工会の発足や、芝居小屋「老松座」を建築するなど、篤志家、名望家として地域貢献に尽くしました。
現在残る建物は、明治33年(1900)から明治34(1901)年にかけて建築したものです。
旧唐津街道に北面して広大な屋敷を構え、西側に主屋、東側に練塀を巡らし表門を設けています。主屋は木造二階建て、屋根は平入り入母屋桟瓦葺き。一階は前土間形式の広大な土間と勘定場を備え、中居(店座敷)には神棚を祀り、勘定場上部に吹き抜けを設け、持送りで支える手摺のついたベンガラ漆で塗られた欄干が、かつての繁栄を物語っています。
2005年に、この建物を解体するという話がありましたが、地域の歴史的な価値が高く、景観を残す上でも非常に重要な建物であると考え判断し、建物を壊さずにいかす方策を考え、会社独自で修復・保存を行いました。今ではもう造る事のできない約100年前の町家建築をぜひ感じてください。
In the Edo Period, the wealthy merchant family Nishihara opened shop in the heart of Itoshima,an inn-town Maebarujuku. Nishara sold rice and wheat, exchanged money and had various businesses.Kozai no Mori was once a shop that mainly sold textiles, built for the Nishihara’s relatives in Meiji 34(1901). In that time there were very few three story buildings and warehouses. The Nishihara’s prosperity can be seen from this house.
Alternative Space・Gallery
弊社では、この建物を動態保存し、次世代へ引き継ぐことを目的に「地域の歴史と文化の交差点」をテーマとする文化企画を行っております。かつて豪商と呼ばれた人たちは、商人として経済活動を行うと同時に、文化活動の支援や人材育成なども行っていました。そこで、これらの歴史性を踏まえ、地域の歴史・文化を醸造する場、そして、次世代を切り開くアーティストの表現・成長の場として、講座や展覧会など、弊社のメセナ活動の拠点として活用しています。
>> 文化企画アーカイブ
2011年には、弊社の取り組みが評価され、公益財団法人企業メセナ協議会が、芸術文化の振興に高く貢献した企業・企業財団を顕彰する「メセナアワード2011」に於いて「解体新生賞」を受賞しました。
>> メセナアワード2011「解体新生賞」受賞
Lunch&Café-明治の町家で歴史を味わう
古材の森が立地する前原は、かつて、唐津街道の宿場町として栄えた場所です。ここには、糸島半島にある農村や漁村など各所から人や物が集まり、また様々な食材が揃った場所でもありました。この歴史性を活かし「糸島でとれる食材を使った体に優しい料理」をコンセプトに、お食事を提供いたしております。明治時代に建てられた歴史ある名建築で、ゆっくりとした時間をお過ごしください。
Lunch 11:30~15:00(OS 14:00)
Café 14:30~17:00(OS 16:30)